本学卒業生で,九州大学大学院数理学研究院教授の綿谷安男(わたたに やすお)氏が,9月24日(火)~27日(金),愛媛大学を会場に開かれた日本数学会秋季分科会で「日本数学会2013年度(第12回)解析学賞」を受賞しました。 受賞テーマは「多角的な視点に基づく作用素環論の研究とその応用」です。 綿谷氏は,本学教育学部特別教科(数学)課程を昭和52年3月に卒業後,本学研究科に進みました。恩師である故・中村正弘名誉教授のもとで,作用素環論(※)の研究に着手。大学の枠をこえた作用素論と作用素環論の研究グループの中で研究を続けてきました。 今回の受賞は,継続して取り組んできた作用素環論の研究で注目を集める数々の結果を得てきたことが,高く評価されたものです。 綿谷氏は「大好きな数学の研究をここまでやってこられたことが一番の幸せです。わたしは強い数学的力量をもつわけでもなかったのですが,作用素環の中に異なった分野との新しい芽をいくつか開拓できたことが評価されたのではないかと感謝しています。よき研究者仲間にめぐまれました」と喜びの言葉を語っています。
※「作用素環」とは,ヒルベルト空間上の有界線形作用素(無限行列)の作る環のことである。 2×3=3×2のような交換法則が成立しない無限行列の集まりが織りなす構造を関数解析の手法で研究する。作用素環論は量子力学の数学的基礎付けを行ったJohn von Neumann(ジョン・フォン・ノイマン)によって開拓された比較的新しい分野である。点のない幾何学としての側面もあり,代数と幾何と解析が交錯する豊かな領域である。