トピックスバックナンバー(2011年~2020年)

2013.07.19

米国とスウェーデンの教員及び研究者が家庭科教育の授業で講義

 「家庭科授業における問題解決の実践」をテーマとする特別授業が7月9日(火),柏原キャンパスで開かれ,「中等家庭科教育法I・III」を受講している学生約40人が参加しました。
 家政教育講座の鈴木真由子教授が海外から招いた講師による特別授業で,同じく家庭科教育を担当している大本久美子准教授も協力しています。
 当日は,アメリカ・オハイオ州のベルフォンティーン高等学校家庭科教諭のメリベス・モタセム氏を講師に迎えました。また,スウェーデンからウプサラ大学教員養成学部副学部長のカリン・ヤルメスコヴ氏とストックホルム市ホグサトラ中学校教諭のマリア・フェルド氏も講師として授業に参加し,スウェーデンの家庭科教育の概要と課題についてコメントしました。
 モタセム氏は,「問題解決の実践」について,米国の6つの家族に協力を得ながらそれぞれの経済や家族状況に応じて望ましい食事を作る「ファミリー・ディナー・チャレンジ」の実践事例と,ポートフォリオの活用や生徒自身が評価するルーブリックを使っての授業評価を報告しました。また,同じく「インテリアデザイン・チャレンジ」の問題解決プログラムのほか,「地球から月へ」というプログラムのデモを実演しました。
 24時間後に地球が消滅するので月に移住しなければならなくなったとき,「1つのスーツケース(23kgまでの荷物が収納可能)にあなたは何を持っていきますか」をテーマに,それぞれの生徒がその問題解決にアプローチする実践事例を紹介しました。モタセム氏は「実世界ではあらゆるところに問題が生じ,選ぶ力と実行,そして反省する力が試されます。このように家庭科教育では,生徒が問題解決スキルを日々の生活に応用する手助けをすることが求められています」と,家庭科を指導する教員の役割の重要性を強調しました。
 一方,スウェーデンでの家庭科の名称は「家族と消費」です。国の作成したカリキュラムによってすべての生徒が学ぶ必修科目になっています。国のトータルな教育目標は「持続可能な発展」で,それを受け家庭科では(1)健康(2)経済(3)環境の3つの視点からカリキュラムが作られています。
 意見交換を行った結果,衣食住の日々のルーチンワーク確立が切実な課題となっているオハイオ州の高校と,高度な社会福祉が実現されているスウェーデンでの家庭科教育の現状と課題の違いが明らかにされました。そのうえで,家庭科において現状や視点は異なるものの「問題解決の実践」の必要性が確認されました。
 鈴木教授は「問題解決型の授業は,日本の家庭科教育でますます必要となっているが,現場では充分に実践されるに至ってないのが実情です。メリベス先生は,実践的推論プロセスを丁寧に押さえた問題解決型の授業を展開しています。そうした授業を受けたことのない学生たちに,是非,具体的なイメージを持ってほしかった。受講後の感想からは,メリベス先生の授業の魅力を理解してもらえたと思います」と話しています。

メリベス・モタセム氏
授業の様子

[左写真]メリベス・モタセム氏

(総務企画課)