本学学校危機メンタルサポートセンター(小山健藏センター長)は,3月2日(金)に池田キャンパス内のさつきホールで,「第10回センターフォーラム」(共催:日本安全教育学会)を開催しました。「学校危機の諸相とその予防戦略を考える-大規模災害によって被害を受けた子どもたちへの支援を考える」をメーンテーマに,基調講演とシンポジウムを行い,全国から学校関係者など約210人が参加しました。 初めに附属池田小学校事件の犯罪被害者遺族である本郷紀宏氏が「子どもの安全を守る~悲劇を繰り返さないために~」と題して基調講演を行い,発生から10年を経た事件の原点を振り返りました。本郷氏は「どんなにわが子を愛しても,いつも気にかけていても,それだけで安全を守ることができない。なぜこのような悲惨な事件が起こったのか,安全管理に問題はなかったのかを徹底的に検証し,学校や地域などが一体となり,それぞれの立場で安全に関する施策に取り組む必要がある。危機意識を風化させてはならない」と呼びかけました。 続くシンポジウムでは,東日本大震災で心のケアに取り組んでいる仙台青葉学院短期大学の高橋聡美講師が「大規模災害によって被害を受けた子どもたちへの支援について」をテーマに報告しました。同講師は,郡部の地域では,祖父母を亡くした子どものダメージが大きいケースがあり,サポートを受けられない状況があることなどを指摘し,「避難の際に多くの遺体を見た子どもの心のケアが急務だ」「心の傷は見えない。子どもが言動などで見せる姿を丁寧に見ていかなくてはならない」「教職にある者はグリーフ(grief)ケア=死別などによる深い悲しみ。悲嘆。苦悩。嘆きに対するケア=に正しい知識をもって臨むべきである」などと訴えました。 このあと,アメリカでハリケーン・カトリーナの被害を受けた人々の支援を繰り広げている南カリフォルニア大学のマリーン・ウォン教授が,「Psychological First Aids(心の救急支援)実践の経験から」と題して報告しました。 また,同センターでは,3月4日(日)にも「子どものTF-CBT(トラウマ焦点化認知行動療法)」をテーマに「第2回センターシンポジウム」を開催し,全国の子ども家庭センターや児童相談所等から医師・臨床心理士など約130人が参加しました。 東京都医学総合研究所の飛鳥井望副所長が「トラウマの認知行動療法について海外の動向と日本での現状~実証的研究をふまえて~」と題して報告を行い,それを受けて,同センターの岩切昌宏・野坂祐子・瀧野揚三の各教員が「子どものTF -CBTの構成要素(コンポーネント)と手順」について,大阪府こころの健康相談センターの亀岡智美氏が「子どものTF -CBTの臨床的活用」について指導の具体例を解説しました。 今後同センターでは,4月14日(土)に第2回アジア・太平洋学校安全推進フォーラム「アジア・太平洋地域におけるInternational Safe School活動の展望」を開催し,全国に情報を発信し続ける予定です。
(企画課広報室)