本学教職教育研究開発センターの主催による「2010年度現代教育セミナー」第1回が8月28日(土),天王寺キャンパス西館で開催され,一般市民や教員,子育て問題の支援に携わる人など,約50人が参加しました。 近年,子どもの虐待が深刻な社会問題となっています。虐待は親の子育て不安や雇用不安,経済的困窮が絡んで引き起こされるとも言われており,さらなる広がりを見せることが懸念されます。 このセミナーは,虐待問題に取り組んでいる児童精神科医と弁護士がそれぞれの立場から話をし,虐待の実情と,防止・改善に向けた支援のあり方について一緒に考えていこうという企画です。 今回は,「子育て不安が子ども虐待を引き起こす?―児童精神科医師の立場から―」と題して,本学の岡本正子教授(家政教育講座)が2時間にわたり話をしました。 岡本教授は,自らの臨床経験を織り交ぜながら,少子化や核家族化などの子育て環境の変化と,それに伴う親の育児不安や精神的ストレスの増大などについて分析し,「子ども時代から失敗したことがなく育った人が親になり,子育てが初めての失敗経験となったとき,その失敗を認められない傾向がある」などと,さまざまな視点から虐待の要因や背景,仕組みなどを解説しました。そのうえで,虐待からの回復や予防,子どもと家族への支援のあり方について触れ,育児者に求められるのはSOSを出せる力と,支援を受ける力であると述べました。また,虐待を受けて育った母親が,同じように育児に悩む母親とのやりとりの中で自信を回復したという事例を挙げて,「子ども時代に親から虐待されて育ったからといって,みんなが自分の子どもを虐待するという考えは間違っている。そのためにも,虐待を受けた子どもへの心のケアがとても大事です」と語り,「人は人との間で生きる力を身につける。支援者は辛抱強く寄り添っていくことが大切で,多様な支援リソースが求められます」と強調しました。 第2回は9月11日(土)午後2時から4時まで,同じく天王寺キャンパス西館で開かれます。「子ども虐待の実態と防止に向けて」と題して,弁護士の峯本耕治氏が法律的な立場から講演します。※参加の問い合わせは,本学地域連携係まで。電話072-978-3253(定員80人,参加無料)
(企画課広報室)