「犯罪被害者が語る公開授業~子どもたちを被害者にも加害者にもしないために~」が7月6日(火),柏原キャンパスで開かれました。 家政教育講座の鈴木真由子准教授が呼びかけた,「命の大切さを考える」(大阪府との共催事業)第3弾で,教員をめざす学生約80人が,少年犯罪について考えました。 講師は,少年犯罪被害当事者の会会員の一井彩子さん。平成7年に,当時中学3年生の長男が隣の校区の中学生と卒業生ら4人から集団で暴行を受け,命を奪われるまでの経緯と体験を生々しく語りました。 また,その後少年刑務所を出所した主犯とその両親の訪問を受け入れ,1年に1度だけ会っていることも話しました。
今は,一井さんら被害者遺族等の活動により,少年法が改正されるなど改善されてきてはいますが,事件当時は,少年事件の場合は民事裁判を起こさなければ,被害者は事件についてほとんど知ることができませんでした。一井さんも,訪問を受けて初めて加害者の顔を見たそうです。「みんなに恐れられていた主犯の少年が,目の前のおとなしそうな子でした。親に言われないと何もできない,質問しても母親が全部答えてしまう,そんな状態でした」と,対面の様子を語った上で,「しつけは親の責任。悪いことは悪いと,大人がその都度教えていかないといけない」と訴えました。 そのほか,事件後の心の支えのひとつとなってくれた長男の友人たちについても紹介し,「大人たちは,報道された『けんかごっこ』を信じて変わってしまったが,その子たちは,息子が生きていた時と同じように接してくれて,一緒に泣いたり笑ったりしてくれています」と語りました。今でも,子どもができたなど,報告にきてくれるそうです。 一井さんは最後に「学校へ出向いて,子どもたちに講演して気になることがある」として,「講演してから,後日感想文を読ませてもらうのですが,『命は大事だとわかっているが,今はつらい。死にたい』『友達がいじめられているのを助けられずつらい』『誰にも相談できない』などと,苦しい胸の内を明かす子どもたちが多かった」と明らかにしました。その上で,「自分は講演後のフォローができないので,先生方の対応に期待しています。子どもたちに,人の心の痛みがわかるような,思いやりの心を育ててほしい」と訴えました。 講演に聞き入った学生の一人は「今日の話をしっかり受け止めて教師になりたい」と感想を述べていました。鈴木准教授は「この授業では“いのち”について学ぶことの意味に加え,臓器移植のジレンマについても考えました。いじめ問題とも関連が深く,学生たちは学校現場に行っても逃げないで歩んでくれると信じています」と話していました。
(企画課広報室)