教養基礎科目『健康科学への招待』の特別講義として,「効果的なむし歯予防について」をテーマに,滋賀県健康医療課健康寿命対策室長兼口腔保健支援センター長の井下英二氏が,7月17日(金)に柏原キャンパスで講演しました。 「口の中を見ると,その人の生い立ちがわかる」と切り出した井下氏は,家庭教育力が低い子どもほどむし歯をつくる傾向にあるといい,その科学的根拠と学校での集団予防策を説明しました。むし歯は,糖を媒介に細菌が出す酸により歯を構成するエナメル質が溶けた状態(脱灰)を指します。ただし,唾液に含まれる,リンやカルシウム,フッ素の働きによりエナメルを修復する,再石灰化が起こります。規則正しい食生活を送れば,食後一時的にpH値が下がるものの,再石灰化によりもとに戻ります。ところが,不規則な食生活を繰り返していると,pH値は上がらず,酸化してむし歯になります。このことから,むし歯は生活習慣病であると井下氏は強調します。 むし歯の予防には,日常生活でのフッ化物応用が最も効果的であると,国際機関や海外の予防歯科学会が認めており,アメリカでは水道水にも適量添加されています。滋賀県では,フッ化物応用による予防として,フッ化物洗口の集団実施を学校で進めており,結果,竜王町の中学校では,平成7年に平均4.34本あったむし歯が,平成21年では0.28本と激減しました。学校で行うことのメリットについて井下氏は,「集団で行えば,容易で,永続的で,かつ安全です。むし歯のリスクは誰しもが持っていますが,リスクの高い,予防歯科に関心のない家庭の子どもほど効果的で,健康教育に活用できます」と語りました。 出席した学生からは「自分が知っていたむし歯予防の概念が覆りました」「学校という場所が,学習の場だけでなく,さまざまな可能性を秘めていることを知り,とてもためになる授業だった」などの声が寄せられました。
[左写真]滋賀県健康医療課健康寿命対策室長兼口腔保健支援センター長の井下英二氏[右写真]講演の様子
(広報室)