大学院総合基礎科学専攻1回生の山本一樹さんが,東京農工大学で5月15日(木)から16日(金)までの期間に開催された「第8回有機分子エレクトロニクスに関する国際シンポジウム」(主催:電子情報通信学会)でポスター賞を受賞しました。71件のポスター発表があり,ポスター賞を与えられた5件のうちの1件に選ばれました。 山本さんの研究タイトルは「フォトクロミック・ジアリールエテン膜への電気的キャリア注入により引き起こされた異性化反応」です。分子の種類は同じでも,構造の違う物質のことを異性体といい,これが相互に変換しうる化学的変化を異性化といいます。ジアリールエテン膜の分子は,一般的に光に当てると異性化反応を起こしますが,光の代わりにキャリア注入という電気的エネルギーを加えることによっても同様の反応が起こることが知られています。しかし,膜内の分子がキャリア注入によってどのようなメカニズムで異性化反応を起こすのかは,これまで解明されていませんでした。
今回,山本さんはジアリールエテン膜内に存在する,開環体分子と閉環体分子という異性化分子の存在分布を解析し,相互的な異性化反応の方向によって膜の異性化状態が異なることを示しました。ジアリールエテン膜は,記録と消去の繰り返しができる有機半導体メモリの材料としても利用可能です。この研究結果は,光を使わずに記録ができる将来のユビキタスコンピューティング用の超低コストメモリへの応用が期待されます。 山本さんは「大学院に入って最初の学会発表の上に英語での発表だったため,受賞が決まってとても驚きましたが,素直に嬉しいです。日頃の積み重ねが大事だと実感しました」と喜びを語りました。 指導教員の辻岡強教授は「とても意欲的に取り組む学生で研究室の重要な戦力になっています。研究評価は研究内容とプレゼンテーション能力の掛け算です。今回の受賞は日頃の努力が他の研究者に良く理解してもらった事によると思います」と称えました。
[写真]受賞した山本さん(左)と辻岡教授
(総務企画課)