ラボ訪問 栁岡 開地 准教授

心理学を通して子どもの思考過程を探る

総合教育系(初等教育部門)
栁岡 開地 准教授

大学の先生になろうと思ったきっかけは?

A.学部生時代に発達に遅れのある子どもに関わるアルバイトをしていたのですが、例えば足し算を教えると、教えた問題はできるけれども、数字や問題の形式が変わるとまったく解けなくなる子どもが多くいました。これは氷山の一角で、他の事象でも教えたことが広がっていかないという課題を常に抱えていました。そこで、このことを卒業論文のテーマにしようと考え、指導教員に「どのように教えたら子どもがより理解できるようになりますか」と質問したところ、「そもそも子どもがどのように物事を学んでいるかが分からなければ、どう教えるべきかも分からないのではないですか」と言われ、教える側が抱える課題への見方が大きく変わりました。そこから、どう教えるかという実践だけではなく、子どもが学習したことをさまざまな場面に広げていく思考過程を研究したいと思ったのがきっかけでした。


現在の研究内容は?

A.最近は、子どもが身につけた習慣が彼らの我慢強さに与える影響を研究しています。具体的には、「マシュマロテスト」という課題を用います。子どもの目の前にマシュマロを1つ用意し、「そのマシュマロをいますぐ1つ食べてもいいし、私が他の部屋からもう1つマシュマロを取ってくるまで待てれば2つ食べることができるよ」と言って、一人でどれだけ待てるかを観察するものです。これはアメリカでは有名な課題なのですが、日本ではほとんど取り組まれていませんでした。というのも、日本ではみんなで「いただきます」をしてから食事を始める習慣があるので、きっと我慢するだろうと直感的に思っていたからかもしれません。アメリカと比較検証してみると、実際に日本の子どもはアメリカの子どもに比べて、マシュマロを待つ時間が長いことがわかりました。一方、プレゼントを報酬とした場合は、逆にアメリカの子どもの方が長く待っていました。今後は、この習慣に支えられた場面ごとの我慢強さが、どのように他の場面に広がっていくのかを研究しようと思っています。


どのような授業を担当していますか?

A.心理学の授業を主に担当しています。例えば「心理学研究法」という授業では、学生に実験や調査に参加してもらい、そのデータを分析し、結果をまとめるという一連の手続きを体験してもらいます。そして、その内容を心理学論文の型に当てはめて、論文を作成してもらいます。課題は大変かもしれませんが、論文の書き方を教えてもらう授業はあまりないので、卒業論文を書くときにこの授業を受けていて良かったなと思ってもらいたいです。


キャンパス内の好きな場所・雰囲気は?

A.天王寺キャンパスの食堂が好きで、お昼に大学にいるときはよくそこでお弁当を買っています。雰囲気だと一番びっくりしたのは、教育現場と関わりをもっている学生がかなり多いことですね。私が学生のときは教育実習が初めての現場体験でしたが、大教大の学生はサポーターやアルバイトとして普段からよく現場に行っています。研究でも実際に現場に行って子どもや先生と接する中で着想を得ることは大事だと思うので、すごく良いところだなと感じています。


ゼミの活動内容は?

A.現場と関わりをもっている学生が多いので、例えば子どもの褒め方や行動の動機づけなど、現場での経験から着想を得た内容をテーマに卒業論文を進めていくことが多いです。研究を進める時は、学生同士の意見交換を重視しており、ゼミ中は学生間で議論したうえで教員がコメントするという形式をとっています。また、文献を読んでまとめるだけではなく、アンケートや実験などを通して実際にデータを取って、分析・考察をします。卒業後も研究してよかった!と思ってもらえるゼミ活動をめざしています。


(2025年6月取材)
※掲載内容はすべて取材当時のものです。

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