教職大学院の制度のもとでは,10単位以上は学校における実習が義務化されています。ここでは,本学で行われている10単位の「学校実習」に関する科目ついて説明をします。
求められる実習内容・時間
「学校実習」は,院生自身が学修計画書に基づき,研究テーマや目的,内容・方法を明確に計画して実施する実習であり,大学院と実習校の往還,理論と実践の往還を実感すると同時に,実践的な課題解決能力を育成することをめざしています。例えば,講義で学んだことをもとに学校実習のテーマを考えたり,学校実習において自身が実習した体験を講義の中で意味づけるといったようなことが行われています。
本学の現在の学校実習は,以下の表のように位置づけられています。学校実習で自身が設定したテーマに基づいて問題解決を図り,その結果を修了時に提出する「実践課題研究報告書」にまとめていきます。
1年次前期
(第1セメスター) |
1年次後期
(第2セメスター) |
2年次前期
(第3セメスター) |
2年次後期
(第4セメスター) |
基本学校実習 I
基本学校実習Ⅲ(特別支援)
2単位
60時間以上 |
基本学校実習 II
基本学校実習Ⅳ(特別支援)
2単位
60時間以上 |
発展課題実習 I
発展課題実習Ⅲ(特別支援)
3単位
90時間以上
|
発展課題実習 II
発展課題実習Ⅳ(特別支援)
3単位
90時間以上 |
実習により期待される効果
学校現場における問題に根ざして立てられたテーマに基づいた問題解決を経験し,振り返ることにより,より実践的な知見を得ることができます。また,その問題解決のプロセスを経験することにより,今後何か新たな問題が自身の目の前に現れた際にも,学校実習の経験を活かして解決できることが期待されます。
現職教員院生が立てるテーマは,所属する教育委員会や学校が持っているテーマと直結しているものとなっています。このことから,院生が学校実習を通して得た知見については,すぐに現場へ還元できる仕組みになっています。
学部卒院生については,在学中に特定のテーマについて学びを深めることになるので,将来学校現場に出る際の大きな武器となります。ただし,そのテーマは実習を受け入れていただく学校の事情や方針が優先されるため,それらと合致しなければ,必ずしも当初計画をしたような実践研究が進められるとも限りません。現実世界において,調整をしながら課題を遂行する能力が求められることになります。また,当初立てるテーマは理論的な側面から見ても,実現不可能なものであることが多いことが想定されます。講義や指導教員からの指導を通して,柔軟に改善をしていくことが求められます。
この他,学部卒院生については,学校の様子や教師の仕事をよりよく知ることができるというメリットもあります。学部の教育実習では,教員の会議に参加することはまずありません。教職大学院の院生は,教員の各種会議に参加し,教師の仕事も学んでいます。学部生の時よりも,より教員に近い立場から,その職務に関わります。ただ第三者として見るだけではなく,「関わる」ということが期待されます。こうしたメリットもあり,学部卒からそのまま学校現場へ入るよりも安心して教職への移行を図ることができます。
学校実習におけるテーマ例
院生が現在、取り組んでいる実践課題研究テーマについて紹介します。これ以外にも院生一人ひとりが自分自身の課題意識及び学校や所属機関等の課題を見据えて、様々なテーマを設定しています。
【現職教員院生】
・マーケティング戦略を踏まえた入試広報活動の組織化
・若手教員の組織的育成についての実践研究 -グループメンタリングの学び-
・小学校における情報モラル教育の授業開発 -情報モラル教育カリキュラムモデルの作成-
・小中連携に基づく学力向上プランの策定
・「道徳科」の実施を見据えた道徳教育の推進と充実 など
【学部卒院生】
・アクティブ・ラーニング型授業の実践とその効果の検証
・学びのユニバーサルデザインに基づく理科の授業実践
・社会科で行う自己指導能力の育成 ~ジグソー学習法の効果・検証~ など
学部段階における教育実習との違い
学部を卒業し,そのまますぐに大学院に入学を考えている方は,この大学院における学校実習が,学部段階の教育実習とどのように違うのかを知りたいのではないかと思います。学部段階における実習は,実習生自身が「教員免許状」を取得していないため,一人で授業をすることはできません。本学の教職大学院の院生には,入学の要件として教員免許の取得を求めていますので,一人で授業をすることができます。
また,学部段階における実習は,教科教育を中心に実習しますが,教職大学院の実習は,自身で問題を組み立て,それを解決するために実施することを目的のひとつとしています。学校実習においては2年間で300時間以上の実習が課されますが,これとは別に,週に1度「組織協働活動」という自身が立てたテーマとは別にその学校の日常的な課題に関わる機会も用意されます。こうした活動も通して,より実践的指導力を備えた教師になることが目指されます。
学校実習科目の免除について(現職教員対象)
本学大学院連合教職実践研究科で設定している学校実習科目のうち「基本学校実習Ⅰ(2単位)」の単位を現職教員対象に免除することができます。手続等の詳細は,入学後のガイダンスでお知らせします。