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2016.02.05

科学をわかりやすく描き出すサイエンスアートの展示と講演会を開催

 科学教育センター主催「科学を描くサイエンスアート」展示と講演会が,柏原キャンパス大学会館で開催されました。
 展示は1月26日から28日まで行われ,世界的に有名な科学雑誌の表紙などを手掛けたサイエンスイラストレーターの奈良島知行氏をはじめ,ジョンズ・ホプキンス大学およびトロント大学の学生らの作品など,113点が展示されました。来場者は細胞や骨格,生物などが緻密に描かれた作品を細部まで食い入るように見つめ,感嘆の声をあげていました。
 28日には,奈良島氏と,最先端技術を一般にわかりやすく伝える情報デザイナーの川口忠信氏が講演を行いました。

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 始めに川口氏が,サイエンスイラストレーションとは何かを解説しました。川口氏は「写真は重要な部分だけに焦点をあてることが難しく,不必要な情報を消去できない。しかしイラストなら背後の物質や構造を透かして見せたり,因果関係や前後関係を説明することもできる」とその利点を説明しました。そして「サイエンスイラストレーションは,知識に裏打ちされた正確な表現と,構造的にバランスのとれた美しさが求められる。まずは自分が好きと思える作品を見つけ,それを判断基準として美しいものを見きわめる目を養ってほしい」と話しました。
 続いて奈良島氏が,30年あまりにわたって活動した米国のサイエンスアートの現状と,日本における問題点などをざっくばらんに語りました。「大学の医学部の中にアートプログラムがあったり,科学の書籍を作る際にはコーディネーターが科学者,ライター,アーティストをつないで仕事をする米国に対し,日本ではサイエンスアートの重要性がずっと見過ごされてきた」と奈良島氏は力説し,「ビジュアルがなければ教育はできない。子どもたちの理科離れを食い止めるために,教育大学にできることはたくさんある」と述べました。
 講演会には本学の学生や教職員のほか,学外の研究者や科学館職員,サイエンスアートに携わるイラストレーターなども参加しました。講演の随所で質問が飛び交い,日本の出版業界で研究者とアーティストが直接やりとりしにくい状況や,理科の教科書のイラストが減り写真を多用することに対する疑問など,熱い議論が交わされました。
 参加した学生は「写真がすべてを伝えきれないという指摘には驚きましたが,話を聞いて納得しました。イラストを上手に使うことも必要だとわかりました」と話していました。

川口忠信氏
奈良島知行氏

[左写真]川口忠信氏
[右写真]奈良島知行氏

(広報室)