「障がい学生支援」をテーマに,国立民族学博物館プロジェクト研究員の中野聡子氏による特別講義を,1月12日(火),柏原キャンパスで開催しました。中野氏は,幼少期の病気をきっかけに徐々に聴力が低下したことから大学入学時に手話を習得し,現在では手話言語関連研究のトップランナーとして活躍しています。 講義ではまず手話の特性についてふれ,日本語が遠回しな表現を特徴とする「お察しください文化」であるのに対し,手話は英語と同じく率直な表現を特徴とする「言わなきゃわからない文化」であると評しました。また,障がい者が健常者社会に同化することは性質上難しく,「ろう文化」という独自のコミュニティを形成して社会と共生していることを語りました。 中野氏は違いを認めることが新たな発展につながると述べ,「大学も,障がい者を含めた多様なコミュニティを持つ人たちの化学反応により,教育・研究に新しい風が吹き込むポテンシャルを秘めています」と示唆しました。しかし,多様であるということは衝突するリスクもはらんでいます。中野氏は,共生のために「建設的対話」が重要だと説き,「障がいのある人も支援されることが当たり前だと思うのではなく,どうすればお互いがよりよく過ごせるかを考えることが肝心です。皆が協力し合うことでよい支援が生まれ,多様性に富んだ社会が形成されるのだと思います」と締めくくりました。 この後,日本手話の音韻論,形態論,統語論についても紹介がなされ,学生たちはその特性を活かして3つの単語ペアに共通する音素を見つけたり,服の形状や模様を手話で表したりなど,手話を使ったゲームを楽しみました。 出席した学生からは,「“皆一緒”ではなく,違いを認め,理解することで新しい価値観が生まれるのだと思う」「ゲームを通して,伝えることの難しさと大切さを知った」などの感想が寄せられました。
[左写真]講義の様子[右写真]国立民族学博物館の中野聡子氏
(広報室)