令和5年度学位記・修了証書授与式式辞
本日、学部を卒業される皆さん、特別専攻科を修了される皆さん、大学院修士課程を修了される皆さん、ご卒業おめでとうございます。また、これまで皆さんを励まし、支えてこられたご家族をはじめ、関係者の皆さまにも、本学の教職員を代表して、心よりのお祝いをお伝えしたいと思います。
学部を卒業される皆さんは、2020年1月に、日本で最初の感染者が確認された新型コロナウィルス感染症のまん延により、入学式が急遽中止になった学年です。普段当たり前だと思っていたことが一変し、日本中が混乱する中で始まった皆さんの大学生活は、在宅で一人パソコンに向かうという形で始まりました。友人との交流もままならない状況でオンライン方式の授業を受講し、授業ごとに出される山のような課題をこなす日々が続きました。本来なら、4月の入学式で初めて出会った同じ専攻の仲間たち、クラブや同好会の同期や先輩たちと、希望にあふれたキラキラした毎日が待っていたはずなのに、それとは全くかけ離れた、孤独な学びから皆さんの大学生活が始まりました。
本学は、皆さんが入学した年には、既に全学で、各自が自分のデバイスを利用する授業体制、いわゆるBYOD(Bring Your Own Device)が確立されていました。関係者において、コロナ禍に対応した授業の実施方針を定め、オンライン授業について検討を行い、短期間のうちにFD研修を重ねて各講義の適切なコンテンツ提供に取組むことで、他大学に比べて、迅速に授業をスタートすることが出来ました。
振返ってみますと、コロナ禍により、学業期間の大部分は、皆さん自身が大きな制約を受ける中で過ぎて行ったことと想像します。学業の継続にとって障害になる事や、前提として解決しなければならない課題も多くあったと思います。しかし、そのような状況の中でも、皆さんは自らの意志と努力で学業を遂行し、成長し続けました。皆さんが大学生活を送ったこの4年間は、将来の困難に立ち向かうための貴重な経験となったと確信しています。
皆さんは、今後大学院への進学を志しておられる一部の方は別にして、本日取得された学位を手に、これまでの学生生活とは大きく異なる領域で活動されることになります。教職に就いて教師としての活動を始める多くの卒業生の方々、企業人として、あるいは公務員としてはばたく皆さん、さらには大学院修士課程を修了され、若き専門家としての道を歩み始める皆さん、皆さんが向き合っていく社会は、近年大きく変容してきましたし、現在もなお、変容し続けています。
世界は今、日本のように人口減少が進む国がある一方で、グローバルサウスでは人口増加が続き、2060年には、世界の人口は100億人を超える見通しとなっています。食糧や水、エネルギーなどの資源問題、防災や気候変動への対応に加えて、国際情勢の安定化などについても喫緊の課題となっています。
一方、 ビッグデータやAI、ロボット、IoTなどが社会の重要な役割を果たす超スマート社会の進展を担う人材の育成や確保が必要になっています。
ボーダレスなグローバル化が進展し、社会とその要素は、多様化、複雑化、複層化の一途をたどり、予測不可能で変化が激しい社会において、的確かつ適切な対応能力を身に着けることが大切だと思います。そのためには世界情勢を知り、世界の中での日本の立ち位置も知っておく必要があります。若いみなさんには、将来の新たな課題や社会の変化に対応できる確かな洞察力と構想力、そして実行力等を備え、日本はもとより国際社会に貢献できる人材になって頂きたいと思っています。
皆さんの母校である大阪教育大学は、皆さんの今後の活動と並行するように、今後の教育界を革新していく役割を担う大学として、文部科学省より教員養成フラッグシップ大学の指定を受けております。大阪教育大学が中核となって地域の教育委員会や産業界との連携を推進し、大学と学校教員との連携活動を進展させるとともに、他の教育系大学との連携を一層深め、教員養成システムを強化していくことで、日本の学校教育の内実を組織的に高度化していく取組みを進めています。また、カリキュラム面においては、ダイバーシティ教育を基礎として先導的・革新的な教員養成カリキュラムを一体的に展開し、教員となっていく学生の資質の多面性を保障して、今後の学校現場の教育が重視している多様性に備えること等を、既に進めているところです。そうした意味では、皆さんの今後の活動と大阪教育大学の教員養成フラッグシップ大学としての活動は、地球規模の社会形成の先導役として、共通の役割を担うことになるのかも知れません。
大阪教育大学は、今年(2024年)、創基150周年を迎えました。1874年(明治7年)に教員伝習所を起源とし、1949年に新制大学がスタートすると共に、現在の大阪教育大学の前身であります大阪学芸大学が開学していますので、こちらは今年で75周年になります。
秋には、創基150周年、開学75周年となる節目の記念式典を予定しています。また、4月には、天王寺キャンパスに、産官学連携拠点となる「みらい教育共創館」がスタートし、大阪市教育センターとの共用がはじまります。日本の将来を見据え、学校教育に求められる変革に、教育委員会や学校現場、行政、産業界、大学等が、それぞれ抱える課題と資源を一堂に集積し、大きな成果を生み出す共創拠点として、全国に類を見ない日本初の取組みが始まります。
大阪教育大学での学びは、皆さんの人生の新たなスタート地点です。これからは、知識だけでなく、人としての成長や社会への貢献も重要です。自らの信念を持ち続け、困難に立ち向かう強さを忘れずに、未来に向かって進んで行ってください。皆さんが目指す未来が、より輝かしいものとなりますよう、心より願っています。
最後に、この大学で築いた友情や絆を大切にし、社会に羽ばたいていく際に、心の支えとして大切にしてください。皆さんの今後の活躍を心より応援しています。本当におめでとうございます。
2024年3月25日
大阪教育大学長
岡本 幾子