植物の多くは、種の遺伝的多様性を確保するために、自己の花粉を拒絶して他の個体の花粉で受粉する「自家不和合性」という仕組みをもっています。アブラナ科植物においては、花粉の鍵分子と鍵穴となる受容体が同じ遺伝子型のパートナーのみを識別することで、自己の花粉を拒絶することが知られています。しかし、これらの分子がどのようにして自己と非自己を識別しているかはわかっていませんでした。 本学の鈴木剛教授も参加した、東京大学大学院農学生命科学研究科の村瀬浩司特任准教授・高山誠司教授らの研究グループは、アブラナ科植物である菜の花から鍵と鍵穴のタンパク質を作製し、X線を照射して立体的構造を明らかにしました。さらにコンピューターシミュレーションにより、互いの遺伝子型を識別するアミノ酸の同定にも成功し、アブラナ科植物が自己と非自己を識別するメカニズムの詳細を解明しました。 この研究で得られた情報を利用することで、自家不和合性を人為的に誘導もしくは阻害することが可能になり、優良品種の開発や生産につながることが期待されます。 研究成果は2020年10月1日、英科学誌「Nature」のオンライン姉妹誌「Nature Communications」に掲載されました。
菜の花の自己と非自己を識別するしくみを解明~自家不和合性の自他識別機構を三次元構造から明らかに~(PDF 701KB)