令和8年度入学式式辞

令和8年度入学式式辞

 令和8年度、大阪教育大学の学部、大学院、そして特別専攻科に入学された皆さん、誠におめでとうございます。皆さんのこれまでの努力を称えるとともに、これまで皆さんを支えてこられたご家族や関係者の皆様に、心よりお祝いを申し上げます。

 本学は1874年(明治7年)に設置された「教員伝習所」を起源とし、一昨年(令和6年)、創基150周年という大きな節目を迎えました。西日本最大の教員養成大学であります本学の卒業生の多くは、教員として、あるいは教育行政や教育支援人材のリーダーとして、関西のみならず全国の教育を力強く支えています。

 今、皆さんは日本の教育史における「歴史的な転換点」に立っていると言えます。 我が国は現在、深刻な少子化と人口減少に直面しており、2040年には18歳人口が今よりさらに約28万人も減少すると予測されています。

 社会の活力を維持し、未来を切り拓いていくためには、国民一人ひとりの能力を最大限に引き出すことが不可欠です。 社会全体の「知の総和」を「人口×能力」と定義するならば、人口減少が避けられない現状において、社会の活力を維持するためには、教育の質の向上による個々の「能力」を劇的に拡張すること以外にはありません。

 国際社会に目を向けると、生成AIの飛躍的な発展やグローバル化の進展に加え、パンデミック、世界の各地で起こっている紛争、デモクラシーの揺らぎなど、私たちはまさに「正解のない問い」に満ちた激動の時代を生きています。

 OECD生徒の学習到達度調査(PISA2022)では、日本の生徒の数学的・科学的リテラシーや読解力は高水準にある一方、自律的に学ぶ態度や自己効力感がOECD平均に比べて低く、デジタル・リソースの使用頻度についても依然として課題があることが指摘されています。 2040年にはAIやロボットを使いこなす専門人材が約340万人も不足すると予測される中、実生活や社会の事象から問題を見出し、数理的手法で捉えて主体的に未来を切り拓く力を育むことは、教育界に求められる極めて大きな使命です。

 変化が激しい時代において、教育の姿も劇的に変わりつつあります。GIGAスクール構想による一人一台端末の普及やCBT(コンピュータ・ベースド・テスティング)の導入は、日本の教育現場で150年もの間続いてきた「紙のテストで競い合う」というスタイルを刷新し、新しいスタンダードを創り出そうとしています。これからの教育は、学習者が自ら学びを組み立てる「個別最適な学び」と、他者と高め合う「協働的な学び」へと大きくシフトしていきます。

 歴史ある本学ですが、その活動は極めて先端的であり、変革の最前線にあります。本学は現在、文部科学大臣より「教員養成フラッグシップ大学」の指定を受け、日本の教員養成システムを牽引する重責を担っています。

 昨年3月に、本学が開発した先導的な授業科目を他大学の教職課程へ提供する取組みが、大学設置基準の特例として、文部科学大臣より日本で初めて認定されました。公立大学や私立大学など、組織の枠を越えて教育の質を保証する画期的な挑戦を進めています。

 また、デジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進においても、着実な成果を上げています。 教員の生涯学習を支えるオープンエデュケーションプラットフォーム「OZONE-EDU」は、その独創性と先進性が高く評価され、昨年、国立情報学研究所より「GakuNin of the Year 2025」をはじめとして数々の栄誉ある賞を受賞しました。「OZONE-EDU」は、教職課程の単位認定から現職教員研修まで「学び続ける教師」を体現する基盤です。

 皆さんは、こうした最先端のデジタル環境を日常的に活用し、自らの専門性を磨いていくことになります。

 皆さんの学びの舞台となる二つのキャンパスも、それぞれが独自の役割を深化させています。金剛生駒紀泉国定公園内にあり、豊かな自然に囲まれた「柏原キャンパス」は、深い思索と学問的探求に没頭できる環境です。一方、大阪市内にある「天王寺キャンパス」には、オープンから3年目を迎えた「みらい教育共創館」があります。ここは、不登校支援やICT利活用といった現代の教育課題に対して、産・官・学が一つ屋根の下に集い、知恵を出し合い解決策を創り出す「共創」の拠点です。

 皆さんが本学で学ぶ意義は、単なる既存知識の習得に留まりません。学部生は、豊かな人間性と幅広い教養を土台とした実践的指導力を。大学院生や特別専攻科生は、より高度で専門的な研究能力と課題解決能力を、それぞれの組織において、未知の問いに対して自ら答えを構想し、実行する力を養ってください。

 本学は、皆さんが安心して挑戦し、時には失敗し、そこから再び立ち上がるための拠点でありたいと考えています。何かに行き詰まった時、あるいは高い志を実現したいと願う時、遠慮なく教職員や仲間に相談してください。大阪教育大学は、皆さんの「志」を全力でサポートしてまいります。 大学での時間は長いようであっという間です。学問に打ち込むことはもちろん、スポーツや文化活動、地域貢献など、学外のリソースも積極的に活用し、自身の可能性を大きく広げてください。

 皆さんがこの学び舎で築く絆、深める知性、そして育む志が、日本の、そして世界の未来を照らす確かな光となることを確信しています。 皆さんの学生生活が、実り多く、かけがえのないものとなることを心より祈念し、私の式辞といたします。

 2026年4月8日
大阪教育大学長
岡本 幾子