クリックすると各質問へ移動します。
講師プロフィール・経歴
・ご専門分野、これまでのご経歴を簡単に教えてください。
私の専門は、情報教育、教育方法学、教育工学、教師教育、社会教育学、教育データの分析・利活用です。学校教育において、ICTや教育データをどのように活用すれば、授業改善、学習支援、学校改善につながるのかを研究するとともに、学校・家庭・地域が連携しながら、子どもの学びを社会全体で支える仕組みについても関心をもって取り組んでいます。
これまで、高等学校の情報科教員としての実践経験を基盤としながら、現在は大阪教育大学において、教員養成や現職教員研修に関わっています。特に、教員が日々の教育活動の中で得られるデータを、単なる記録として終わらせるのではなく、子どもの理解や授業改善、学校経営の改善、さらには学校と地域が協働して教育環境を改善していくための根拠として生かす方法について、教育・研究の両面から取り組んでいます。
・現在の活動内容(担当授業・研究内容など)を教えてください。
現在は、大阪教育大学で、教育方法、ICT活用、情報科教育、教育データ分析に関する授業を担当しています。具体的には、教員を目指す学生に対して、授業設計、教材開発、ICT活用、データに基づく教育改善の考え方を指導しています。
研究面では、学校教育における教育データの収集・整理・分析・活用の方法、教員が無理なく教育データを活用できる研修プログラムや教材の開発に取り組んでいます。あわせて、現職教員を対象とした教員研修にも関わり、ICT活用、教育データの利活用、授業改善、学校改善などをテーマに、学校現場の実践に結び付く学びの機会づくりを行っています。
また、学校教育だけでなく、保護者や地域住民を対象とした社会教育にも関心をもち、家庭・学校・地域が連携して子どもの育ちを支える仕組みづくりについても活動しています。PTA活動や地域活動を通して、保護者の学び、地域における教育課題の共有、子どもの安全・安心を支える環境づくり、さらには教育を軸としたまちづくりの在り方についても実践的に取り組んでいます。
・公開講座の講師をされるようになったきっかけは何ですか。
公開講座の講師を務めるようになったきっかけは、教育データの分析・利活用を、大学や研究者だけの専門領域にとどめるのではなく、学校現場や地域社会に開かれた実践的な学びとして広げたいと考えたことです。
学校現場では、テスト結果、アンケート、出欠、学習記録、振り返り、校務に関する記録など、日々さまざまなデータが蓄積されています。しかし、それらのデータをどのように整理し、どのように読み取り、授業改善や子ども理解、学校改善に結び付けるのかについて、体系的に学ぶ機会は必ずしも十分ではありません。
また、GIGAスクール構想や教育DXの進展により、教育データを適切に扱う力は、これからの教員にとってますます重要になっています。一方で、データ分析に対して「難しそう」「統計は苦手」「Excel操作に自信がない」と感じている方も少なくありません。
そこで、教育データ分析を専門的でありながらも分かりやすく、実際の学校教育に結び付けて学べる場をつくりたいと考えました。特に本講座では、学校現場で使いやすいExcelを用いながら、教育データを活用するための基礎を体験的に学べるようにしています。
公開講座は、大学の専門知を学校現場や地域社会に還元できる貴重な機会です。教員、教員志望者、大学生、地域の方々がともに学び、教育をよりよくするための視点を共有できる場として、この講座を毎年実施しています。
講座内容について
・今回の講座のテーマや特徴を教えてください。
学校現場では、テスト結果、アンケート、出欠、学習記録、振り返り、生活面の記録など、日々さまざまな教育データが蓄積されています。しかし、それらのデータは、単に記録・集計されるだけでは十分ではありません。大切なのは、データを適切に整理し、傾向や課題を読み取り、授業改善、子ども理解、学習支援、学校改善につなげていくことです。
本講座では、教育データ分析の入門として、代表値、標準偏差、標準化、移動平均、相関、回帰分析、t検定などの基本的な分析方法を扱います。ただし、統計的な知識や計算方法を学ぶこと自体を目的とするのではなく、分析結果を教育的にどのように解釈し、学校現場でどのように活用するかを重視しています。
特徴は、主に三つあります。
第一に、学校教育の具体的な場面に即して学ぶことです。一般的な統計講座ではなく、教員が実際に扱う可能性のある教育データを想定しながら、子どもの学びや授業改善に結び付けて考えます。
第二に、Excelを用いて体験的に学ぶことです。専門的な統計ソフトを使うのではなく、学校現場でも比較的利用しやすいExcelを使い、データの整理、グラフ化、基本的な分析を実際に操作しながら学びます。そのため、データ分析に初めて取り組む方や、ICT操作に不安がある方にも参加しやすい内容にしています。
第三に、教育データの社会的・専門的な意義を考えることです。教育データの利活用は、個々の教員の授業改善だけでなく、学校全体の教育改善、保護者や地域への説明責任、教育政策やまちづくりにも関わる重要なテーマです。本講座では、データを単なる数値として扱うのではなく、子どもの学びを支え、学校・家庭・地域がよりよく連携するための基盤として捉えます。
・どのような方を対象にした講座でしょうか。
本講座は、主に現職教員、教員志望者、大学生を対象としています。
特に、学校現場でテスト結果、アンケート、出欠状況、学習記録、振り返りなどのデータを扱う機会がありながら、「どのように整理すればよいのか」「分析結果をどのように読み取ればよいのか」「授業改善や子ども理解にどうつなげればよいのか」に関心をもっている方に適した講座です。
また、ICT活用や教育DX、データに基づく学校改善に関心のある方にも受講していただきたい内容です。教育データの利活用は、これからの学校教育において、教員だけでなく、学校運営、教員研修、保護者との連携、地域における教育環境づくりにも関わる重要なテーマです。そのため、教育に関心をもつ大学生や、将来教職を目指す方にとっても、今後必要となる基礎的な力を身につける機会になると考えています。
一方で、本講座は高度な統計知識や専門的な分析経験を前提とするものではありません。Excelを使いながら基本から丁寧に進めますので、統計やデータ分析に苦手意識がある方、Excel操作に不安がある方、これから教育データの活用を学び始めたい方にも安心して参加していただけます。
・受講者の方には、特にどのような力や知識を身につけてほしいですか。
受講者の方には、特に、教育データを適切に読み取り、教育実践の改善に生かすための基礎的な力を身につけていただきたいと考えています。
学校現場には、テスト結果、アンケート、出欠、学習記録、振り返り、生活面の記録など、多くのデータがあります。しかし、データは集めるだけでは意味をもちません。大切なのは、データを整理し、そこから子どもの学びや学校の状況を読み取り、授業改善、学習支援、学級経営、学校改善につなげていくことです。
具体的には、まず、平均値、中央値、最頻値などの代表値や、標準偏差、標準化、相関、回帰分析、t検定など、教育データを分析するための基本的な考え方を身につけてほしいと思います。ただし、単に統計用語や計算方法を覚えることが目的ではありません。分析結果を見て、「この数値は何を意味しているのか」「子どもの学びや授業の改善にどう関係するのか」を考える力が重要です。
次に、データを教育的に解釈する力を身につけてほしいです。同じ数値であっても、教育現場では背景や文脈によって意味が異なります。たとえば、平均点が上がったとしても、一部の児童生徒だけが伸びているのか、全体として底上げされたのかによって、必要な支援や授業改善の方向性は変わります。そのため、数値だけを見るのではなく、子どもの実態や授業の内容、学校環境と結び付けて考えることが大切です。
さらに、データを根拠として説明する力も身につけていただきたいです。学校教育では、教職員間での共有、保護者への説明、地域や行政との連携など、さまざまな場面で説明責任が求められます。データを適切に整理し、表やグラフを用いて分かりやすく示すことは、教育活動への理解を広げ、学校・家庭・地域が協働して子どもを支えるための重要な基盤になります。
最終的には、教育データ分析を「難しい統計処理」としてではなく、子どもをよりよく理解し、教育をよりよくするための実践的な道具として捉えられるようになっていただきたいです。本講座を通して、受講者の方が自分の学校や教育活動の中で、「このデータを見れば、もっとよい支援や改善につなげられるかもしれない」と考えられるようになることを期待しています。
指導への考え方・工夫
・指導するうえで大切にしていることは何ですか。
指導するうえで大切にしていることは、受講者が「分かった」で終わるのではなく、「自分の実践で使えそうだ」と感じられる学びにすることです。
教育データ分析というと、統計用語やExcel操作、数値処理の方法に意識が向きやすいですが、私が特に重視しているのは、データ分析を教育実践に結び付けることです。平均値、標準偏差、相関、回帰分析、t検定などを扱う場合でも、それらを単なる計算手法として説明するのではなく、「この結果から子どもの学びをどう読み取るのか」「授業改善や学習支援にどう生かせるのか」「保護者や同僚にどのように説明できるのか」という視点を大切にしています。
また、受講者の背景や経験はさまざまです。統計やICTに慣れている方もいれば、Excel操作に不安を感じている方もいます。そのため、専門的な内容であっても、できるだけ学校現場の具体例に置き換え、表やグラフを用いながら、段階的に理解できるように心がけています。特に、データ分析に苦手意識をもつ方が「自分にもできる」と感じられることは、とても重要だと考えています。
さらに、教育データを扱う際には、数値の背後に子どもがいるという意識を忘れないことを大切にしています。データは便利な道具ですが、子どもを単純に数値化したり、結果だけで評価したりするためのものではありません。子どもの学びや育ちをより丁寧に理解し、必要な支援を考えるために活用するものです。そのため、分析の正確さだけでなく、教育的な解釈、倫理的配慮、個人情報保護、説明責任についても意識して指導しています。
最終的には、受講者が教育データ分析を特別な専門技術としてではなく、日々の教育活動をよりよくするための実践的な視点と方法として身につけられるようにすることを大切にしています。
・初心者から経験者まで幅広い方が学びやすくするための工夫があれば教えてください。
本講座では、初心者から経験者まで幅広い方が学びやすいように、「操作を学ぶ」「意味を理解する」「教育実践に結び付ける」という流れを大切にしています。
まず、初心者の方に対しては、Excelの操作や統計用語を前提知識として求めすぎないようにしています。データの入力、整理、表の作成、グラフ化といった基本的な操作から確認し、平均値、標準偏差、相関なども、できるだけ学校現場の具体例に置き換えて説明します。たとえば、テスト結果やアンケート結果を題材にしながら、「平均点を見るだけでは何が分からないのか」「ばらつきや分布を見ると何が見えてくるのか」といった形で、数値の意味を段階的に理解できるようにしています。
一方で、経験者の方にとっても学びが深まるように、単なるExcel操作や統計処理にとどまらず、分析結果をどのように教育的に解釈するか、どのように授業改善・学習支援・学校改善に生かすかを重視しています。同じ分析結果であっても、学年、教科、授業内容、児童生徒の実態、学校の課題によって読み取り方は変わります。そのため、データの見方だけでなく、教育的な問いの立て方や、結果を根拠として説明する方法についても扱います。
また、講座全体では、できるだけ「聞くだけ」の講義にならないよう、実際に手を動かしてデータを扱う時間を設けています。表を作成し、グラフを描き、分析結果を確認しながら、「この結果から何が言えるのか」「どのような改善につなげられるのか」を考える構成にしています。これにより、初心者の方は基本操作を身につけやすく、経験者の方は分析結果の活用や説明の視点を深めやすくなります。
さらに、専門的な内容については、いきなり難しい概念から入るのではなく、身近な教育課題から出発することを意識しています。統計やデータ分析を「難しい計算」としてではなく、「子どもの学びをよりよく理解するための方法」として捉えられるようにすることが重要だと考えています。
そのため、本講座では、受講者の経験の違いを前提としながら、初心者には安心して学べる丁寧さを、経験者には実践を深める専門的な視点を提供できるよう工夫しています。
・これまでに印象に残っている講座内のエピソードがあれば教えてください。
これまでの講座で印象に残っているのは、最初は「統計は苦手です」「Excelはあまり得意ではありません」と不安を口にされていた受講者の方が、講座の後半には、実際にデータを整理し、グラフを作成しながら、教育データの傾向を自分の言葉で説明されていたことです。
特に印象的だったのは、単にExcel操作ができるようになったということだけではなく、「平均値だけでは分からないことがある」「標準偏差を見ると、子どもたちの理解のばらつきが見えてくる」「アンケート結果をグラフにすると、学校や学級の課題を共有しやすくなる」といった気づきが受講者の中から自然に出てきたことです。
教育データ分析は、最初は難しく見えるかもしれません。しかし、学校現場で実際に扱うようなデータを用いて一つずつ操作し、結果の意味を確認していくと、受講者の方々が「これは自分の学校でも使えそうです」「校内研修や授業改善に活用できそうです」と感じてくださる場面があります。
そのような姿を見るたびに、教育データ分析は、専門家だけが扱うものではなく、学校現場で子どもたちの学びを支えるために、教員自身が使える実践的な道具であると改めて感じます。受講者の方が、データ分析への苦手意識を少しずつ乗り越え、教育改善に向けた前向きな視点をもってくださることが、この講座を続ける大きな励みになっています。
公開講座への思い
・先生が考える「公開講座の魅力」とは何でしょうか。
公開講座の魅力は、大学の専門的な知見を、学校現場や地域社会の実践的な課題と直接結び付けられることにあると考えています。大学には、教育、情報、データ分析、社会教育、地域連携などに関する専門的な知があります。一方で、学校現場や地域社会には、授業改善、子ども理解、保護者との連携、地域における教育環境づくりなど、日々の実践の中で生じる具体的な課題があります。公開講座は、その両者をつなぐ場です。
特に、本講座で扱う教育データ分析・利活用は、大学の研究としても重要であると同時に、学校現場にとっても非常に実践的なテーマです。テスト結果やアンケート、学習記録などのデータをどのように読み取り、授業改善や学校改善に生かすかは、これからの教育において大きな意味を持ちます。公開講座では、こうした専門的な内容を、現職教員、教員志望者、大学生、地域の方々と共有し、ともに考えることができます。また、公開講座は、大学が一方的に知識を提供する場ではなく、受講者の経験や問題意識から大学側も学ぶことができる場だと感じています。学校現場での具体的な悩み、地域での教育課題、保護者や住民の視点が交わることで、講座そのものがより実践的で豊かな学びになります。その意味で、公開講座は、大学と社会が相互に学び合い、教育をよりよくしていくための接点です。専門的な学びを開かれた形で共有し、学校・家庭・地域・行政が連携して子どもの学びを支えるための土台をつくることが、公開講座の大きな魅力だと考えています。
・年齢に関係なく学び続けることについて、先生のお考えを教えてください。
年齢に関係なく学び続けることは、これからの社会において非常に重要だと考えています。特に現在は、ICT、生成AI、教育データ、教育DXなど、学校教育や社会を取り巻く環境が大きく変化しています。かつて学んだ知識や経験だけで対応できることもありますが、それだけでは十分に対応できない新しい課題も増えています。
しかし、学び続けることは、単に新しい知識や技術を身につけることだけを意味するのではありません。これまでの経験を振り返り、新しい視点と結び付け、自分の実践や考え方を少しずつ更新していくことでもあります。特に教員や教育に関わる人にとっては、社会の変化を理解しながら、子どもたちにとってよりよい学びをどのようにつくるかを考え続ける姿勢が大切です。
また、生涯にわたって学び続けることは、個人の成長だけでなく、地域社会の力にもつながります。保護者や地域の方々が教育について学び、学校や行政と対話しながら子どもたちの環境を考えることは、社会教育やまちづくりの観点からも大きな意味があります。学びは、学校の中だけで完結するものではなく、家庭、地域、職場、社会全体の中で続いていくものだと考えています。
公開講座は、そのような学び直しや学び続ける機会を提供できる場です。年齢や立場に関係なく、関心をもったときに学び始められること、そして他の受講者とともに考えられることに、大きな価値があります。学び続けることは、変化に対応するためだけでなく、自分自身の経験をより豊かにし、地域や社会によりよく関わっていくための力になると考えています。
受講を検討している方へ
・受講を考えている方へメッセージをお願いします。
教育データ分析は、決して一部の専門家だけのものではありません。
テスト結果、アンケート、出欠状況、学習記録など、学校現場には子どもの学びをよりよく理解するための手がかりが数多くあります。
本講座では、Excelを使いながら、教育データをどのように整理し、読み取り、授業改善や学校改善につなげるのかを基礎から学びます。統計やICTに苦手意識がある方でも大丈夫です。
これからの教員には、経験や勘だけでなく、データを根拠に子どもを理解し、教育を改善する力が求められます。
教育をよりよくしたいという思いがある方に、ぜひ参加していただきたい講座です。