小路口真理美特任教授の授業「中等国語科教育法Ⅲ」にて、寺田拓真氏を講師に招き、「教育改革を改革する」と題した授業を7月22日(火)に実施しました。
寺田氏は、元文部科学省官僚で、広島県総務局に籍を置きながら、2021年からミシガン大学教育大学院で「学習科学・教育テクノロジー」を専攻して、修士号を得ています。
寺田氏は、教育改⾰の本来の目的は、世界的な潮流でもある「⾏動主義から社会構成主義への転換」として、表層的な改革を批判し、次のように解説しました。
社会構成主義的学習観の場合、学びのプロセスやアウトプットには、個々人の文化・価値観・アイデンティティが大きく影響するため、必ずしも「答え」が1つに定まりません。そうなれば、本来、探究学習の成果には単純な優劣がつかないのと同様に、学力の格差というものに対する考え方も、変更する必要が出てきます。ただし、問題は、社会全体の評価システムが、社会構成主義的学習観に転換していくことができるか、ということにあります。例えば、大学入試や企業の採用プロセスが、社会構成主義的学習観に基づいているならば、何の問題も生じません。しかし、仮に大学入試や採用プロセスが従来通りであった場合、社会構成主義的学習観に基づく教育を受けてきた高校生や大学生は、それを突破できなくなる可能性があります。結果、学力の格差は生じないものの、社会的な格差は存続、あるいは強化される恐れがあります。だからと言って「社会構成主義への転換を進めなくてよい」ということではなく、学習評価の在り方について絶えざる研究が必要であると同時に、社会的なムーブメントにしていくことが肝要です。
学生たちは、事前に寺田氏の著書『教育改革を改革する』(学事出版、2023)の内容を踏まえ、寺田氏に質疑応答、ディスカッションを行いました。
学生からは、「今までの学校教育の場で自分は、一方的に知識を押し付けられていると感じることが多かったです。しかし、今回新たな教育の方向性を示していただき、教師は、未来を創る仕事なのだと確信できました」などの感想が寄せられました。
講義する寺田氏
ディスカッションの様子
(多文化教育系)