第38回人権教育全学シンポジウムを,12月8日(火),八尾市文化会館(プリズムホール)で開催し,学生ら832人が出席しました。昭和54年から続く同シンポジウムは,人権尊重の意識を高め,大学の構成員として課題を共有する機会として開かれており,今回は「グローバル時代の子どもの人権と学校―在日外国人の子どもの教育と人権―」をテーマとしています。 栗林澄夫学長が開会の挨拶を述べた後,特定非営利活動法人コリアNGOセンター事務局長兼理事の金光敏(キム クァンミン)氏が,スクールソーシャルワーカーとしての経験をもとに,基調講演を行いました。 金氏は,「近年社会的にプライバシーが重要視されていますが,教育だけは適合しません」と述べ,その理由を「子どもの背景に迫れなければ,学校教育は成り立たないからです」と話しました。そして,過去に担当したさまざまな“しんどい子”の実例を挙げて,「学校で問題行動を起こしても原因は学校にあるとは限りません。外国にルーツを持つ子どもは,貧困から複雑な家庭環境を抱えている場合もあり,その場合は,家庭の状況を学校が正しく把握し,理解する必要があります」と語りました。さらに,背景に迫るには,保護者の懐に飛び込んで信頼を得るだけのコミュニケーションスキルを身に着けること,他教員や保護者と意見交換し,チームとして連携することが必要だと強調しました。 続いて,人権教育を主に研究している5つのサークル,同和教育推進校実習生組合,部落解放教育研究会,在日朝鮮人教育研究会,FLOWER,じんけん楽習ゼミが,スライドショーでそれぞれの活動を紹介し,会場の学生に参加を呼びかけました。 休憩をはさみ,パネルディスカッションが開かれました。本学実践教育講座の裴光雄(ペ クワンウン)教授による司会のもと,基調講演に引き続いて金氏,外国にルーツを持つ児童が多く在籍する小学校に勤務する鳴澤唯氏,在日外国人教育を研究する本学非常勤講師の北川知子氏,人権校でスクールサポーターとして働く本学2回生の小川雄右氏の4人がパネリストを務めました。多文化共生をテーマに,それぞれの取り組みから現場が抱える課題について話し合い,「子どもだけでなく保護者のしんどさとも向き合わなければいけない」「教師は今,教育だけでなく福祉支援も求められている」などの意見が出ました。 会場の学生からは,「知らないことをたくさん聞けて勉強になった。学生のうちからこうした活動を自分も経験してみたい」「家庭の問題に気づくにも,教師の力量が試されていると思う」などの声が寄せられました。
[左写真]特定非営利活動法人コリアNGOセンターの金光敏氏による基調講演[右写真]パネルディスカッションの様子
(広報室)