今回は,天王寺キャンパスで開講されている研究科共通科目(現代的教育科目)の「社会的包摂のための諸施設に関する実践的探究」の授業の様子をご紹介します。
この授業は,様々な援助ニーズのある幼児・児童・生徒を包摂するための制度的仕組みやそこでの支援・教育の実際,また,子どもが社会の中で自立することを目指して学校や教員が他の専門家と連携しながらできる教育や支援について理解することを目標としています。
授業の中では,マイノリティ,障がい,貧困等により不利な状況にある全ての幼児・児童・生徒が将来的に社会の中で自立することの意義について学び,そして社会的自律のために社会的・制度的仕組みを理論的かつ実践的に知るために,以下のような社会福祉施設や教育施設の方にご講話いただいたり,実際に施設を訪問したりしながら学びます。
・適応指導教室・フリースクール
・夜間学級
・児童自立支援施設等
・障がい者自立支援に関する施設・事業等
この日の授業では,一般社団法人FUKURO(フクロウ)代表理事であり,株式会社クロフーディング代表取締役・フレンチレストラン「ル・クロ」オーナーシェフである黒岩功氏をお招きし,障がい者自立支援についてご講話いただきました。
【株式会社クロフーディングHP】
【フレンチレストラン「ル・クロ」HP】
まず初めに,ご自身の生い立ちのお話,学校の家庭科の時間にキャベツを切って初めて褒められたこと,お母さまの理解など,調理に携わることになったきっかけをお話しいただき,さらに,ご自身が何らかの障がいがあったのでは,という思いを強く語られました。
そして,だからこそ,自身が苦労しながら三ツ星レストランで学んだプロのシェフとして,彼ら(キャストと呼ばれています)を育ててこられたこと,キャストが提供するサービスが,プロの調理や接客作法であり,お客様に満足していただけるレストランでなければいけないこと,キャストが,お客様を玄関でお迎えして,お料理を調理してお出しし,食事が終わり,お見送りするまでの一連のサービスができるプロの社会人として育ってほしいことなど,レストラン「ル・クロ」での指導について話されました。
これらに力を注ぎキャストへ学びを提供される「ル・クロ」のレストランと,その精神でもある「クレド」と呼ばれる言葉についてのお話は,まさに明日からの学級経営・学校経営に活かせる考え方でした。
話を聞いた院生からは,「『目的』を共有するという言葉がとても印象に残りました。そして発達に偏りがある人にこそ活躍できる場がたくさんあることも印象に残りました」「社会の一員として本人の能力を最大限に発揮し生きがいをもって働くことが可能であることを教えていただきました。『可能性は誰もがもっている』という言葉が印象的でした」といった感想が聞かれました。
今後は,実際に様々な施設を訪問し,子どもたちが社会的に自立するために必要なプロセスや援助者としての役割について考え,そしてその支援として学校や教師に何ができるかを考えていきます。