「一人ひとりを大切にする学校-生徒・教師・保護者・地域がつくる学びの場(デニス・リトキー著)」を読んで

2022/09/05
研究活動院生活動
「一人ひとりを大切にする学校-生徒・教師・保護者・地域がつくる学びの場(デニス・リトキー著)」を読んで

 現在教職大学院援助ニーズ教育実践コースに在籍する杉本 智昭さんのグループが「一人ひとりを大切にする学校-生徒・教師・保護者・地域がつくる学びの場(デニス・リトキー著)」という本を翻訳され,築地書館から出版されました。この本は,杉本さんの他に,谷田 美尾氏,吉田 新一郎氏が翻訳を担当されました。



築地書館HP(外部リンク)

 私も,読者としてこの書籍を読んでみて,是非,本学の学生や院生,このブログをお読みの方に読んで頂きたいと思いました。この本はもともと,2004年に出版された本です。失礼ながら,最新の教育実践が書かれているわけではありません。しかし,本書を読んでみるとわかると思いますが,著者のデニス・リトキー氏が実践している公立高校の教育が今の我が国の教育実践に参考になります。

 私が感銘を受けたことは,「教えるという行為」についてです。著者は,教える行為について,コミュニティを醸成すること,信頼に満ちた人間関係を構築すること,経験を重視することが大事だと述べています。こうした点は,日本,大阪の学校現場でも大事にされています。先行研究についても,著者の言葉として紹介されているので,理解が進みます。子どもの評価の仕方,また,子どもの保護者や家庭を巻き込んだ学校づくりなど,刺激をもらえます。日本で読める海外の教育実践の書籍は多いです。海外と日本では文化的にまた,社会的に異なることがありますから,海外の実践をすぐに日本の学校で導入できません。しかし,違いの中に共通項を見出すことは可能です。

 この本を読んでいて最後に気がついたことがあります。この本による「学び」こそが,この本が提案している「学び」なのだと思いました。つまり,「学び」とは考え方を学ぶこと,そして「学び」は個人的であり,個人が学んだことを深く理解する,自分の中で振り返る必要があります。そして学んだことを実践することも大事です。著者も強調しているように本物の経験が大事なのです。

 本書の冒頭の用語解説,巻末の推薦図書など,訳者の工夫が随所に感じられます。私はこの本のお陰でいつもとは違ったお盆休みを過ごせました。

(記事執筆者:水野 治久教授)